80,000 liter Water Box in
2003 Kaohsiung International Container Art Festival

2003 高雄国際貨櫃藝術節(台湾)
2003年12月12日〜2004年1月11日

台湾最大の港湾都市である高雄市が主催する、港湾を象徴するコンテナを使った国際アートフェティバルは、2003年が2回目。2001年の第1回目に「Water Happiness Movement 水之幸福大移動」を発表し話題を呼んだ池田一は、今回2003年も11ヶ国12人の海外から選抜されたアーティストのひとりとして、招待出品。「80,000リットルの水箱-未来羅針盤」を発表した。
展示期間: 2003年12月12日〜2004年1月11日
長さ10mの2台のコンテナをT字形に接合した《80,000リットルの水箱》

この水箱は未来に移動する方位を指示した位置に配置されているために、『未来羅針盤』と命名する。

長さ10mの2台のコンテナは、磁石を使って、正確に東西南北の方向に合わせて、設置した。

どこまで水が入ると、1,000人分(80,000リットル)の水箱になるかがわかるように、水位を表示

1人分の水の量を表わす「80リットルの水箱」を、1,000人分の水箱を想像するための原基として、設置する。

Message from Kaohsiung Ichi Ikeda

2004年元旦。高雄国際コンテナアートフェスティバルでアシスタントを務めてくれたスーエイカンさんから、年賀状e-カードが届いた。「高雄ではコンテナ展覧会が盛んに展開されています。大晦日の夜何万人も入ったそうですよ」と書いてあった。野外展に一晩で何万人も来るか、と半信半疑な気分。しかし、直ぐに合点した。展覧会の会期中には盛り沢山のイベントが組み込まれていることもあるが、合点するのはその種のイベント効果による集客のことではない。「アートと生活が地続きな」、その底知れぬエネルギーに対してだ。高雄市主催ということもあるが、市民挙げてのエネルギーを感じる。

「80,000リットルの水箱-未来羅針盤」の制作のために、高雄には昨年12月13日まで滞在していた。生活がアートを貫くようなエネルギーは、確かに随所にあった。海外からの招待作家が宿泊していた陽光大飯店の朝、朝食を済ませて部屋に戻ると、毎日傍の小学校の校庭から太鼓の音が聞こえる。窓から除くと、太鼓に合わせて、色とリどりの布を手にした学童が踊っている。先生の固い説教より、小学校の教育の始まりはこの方が健全だ、と私自身も心弾んだものだ。その小学生達が、ある日、製作中の「80,000リットルの水箱-未来羅針盤」から50mほどのところで、ドンドンバンバンと練習をやっている。そこは、コンクリートを円形上に敷き詰めた野外ステージであった。小学生達も、高雄国際コンテナアートフェスティバルでのイベント参加者であったのだ。

もうもうと土ぼこりが舞う港の一角が、猛スピードで展覧会場へと変容していく。茶褐色の靴が忽ち黄土色に変色してしまう中に、「80,000リットルの水箱-未来羅針盤」があっていいものか、と考えこんでしまう。コンテナの中に一部設置する水も、これではあっと言う間に汚れた水になってしまうではないか。そんな懸念を抱きながら、都合で一時帰国。そして、再び制作作業のために会場に入った時には、驚いた。土がない、芝生で覆われているのだ。それも立ち入り禁止の柵もないから、人も車も通行自由。これでは芝生は根づかないよと思っていると、枯れた芝生を取り除いて、新しいものを植え込みはじめた。万事がこの調子である。高雄市長は、「世界的なアートフェスティバルにしていきたい」と力説していた。これらのエネルギーの噴出にまみれていると、実現不可能には思えない。

帰国して、正月を日本で迎えた今、口をついて出た言葉は、「アートがなくなる日」であった。それは、高雄での地続きなエネルギーとは余りに隔たった、孤立化する現代アートへの溜め息である。

2003/1/04 自宅にて 池田一


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