技術サポート:東久志 写真:児玉龍郎
トロントとナイヤガラ滝の間に位置するバーリントンに広がる、ロイヤル植物園。1941年に設立された、世界の大規模な植物園のひとつである。一連の庭園や自然保護区は、2,700エーカーの土地にもなる。
40,000種類以上の植物があり、オンタリオ州南西地域の生物多様性を反映している50のコレクションに寄与している。
ロイヤル植物園で開催される第3回アース・アート展には、世界から5人のアーティストが選ばれ、現地で制作した。
池田一からのメッセージ(1)
「Future Compass 未来羅針盤:多根の水」のコンセプトは、水と植物の間の深遠な関係に起源している。植物の保存と水の管理を通じてのみ、我々は持続可能な未来を描くことが可能だろう。
池田一は、今回の協働者として要請した、鹿児島の東久志と児玉龍郎と共に、6/22カナダに渡った。東久志は、鹿児島市内等で花屋を営むフラワーデザイナーで、花の達人というTV番組でテレビ・チャンピオンになったという植物に関するプロである。児玉龍郎は、1997以来、各地での池田一アートプロジェクトのドキュメンテーションを担当しているカメラマンであり、今回の写真も彼の撮影によるものである。
この両者の、明快で強力なコラボレーションがなかったら、この見事な完成作品には到底いたらなかった。改めて、二人に感謝感謝です。

Ichi Ikeda: Future Compass
by John Grande
ジョン・グランデ(Earth Art展キュレーター)によるテキストから、抜粋
(2月末刊行予定のブックレット『Future Compass』に、全文は掲載)
ロイヤル植物園の中の、ロック・ガーデンに設置

興味深いことに、池田一のFuture Compassが設置されたロック・ガーデンは、1930年代の大恐慌という、非常に経済的に困難な時に造られた。ロック・ガーデンは、もはや使用出来ない砂利のくぼみを開発することで、多くの仕事のない労働者が厳しい時代に生計を立てることを可能にしたのである。近くのナイヤガラの断崖からの石が、ロック・ガーデンを構成する地形を創るために使用された。

JG-1
このアート作品が実現された、まさにその場所に、かってかくも巨大な木が育っていたことを、池田一によって再び思い巡らされる。木は、古代文化においては生命を、生命のプロセスの知恵を表す。さらに、木は天国への導管であり、ある文化にとっては後世そのものでもある。
2つの切り株とクレバス
南北---
2つの巨大な目のような、切り株。数種類の枝が取り囲む中に、竹筒が無数に埋め込まれ、その間に苔を植え込む。その円い凹みに、雨水がたまる仕組みである。
東西--
鋭い裂け目が東西に延びるクレバス。さまざまな根っこが、地下に溜められた水を求めて、クレバスの中に延びている。
JG-2
Future Compassは、水と人間の間の、文化的なランデブーである。池田の作品における木の形態は、我々にとって魅惑的で必要不可欠な全てを人格化している。木は、美しい生きた貯蔵コンテナである。水は、地中であれ内部であれ、木の中を、そして周囲を動く。水は、流出することなく、資源として維持される。このようにして、木々は土壌の表面を維持し、木々が成長する地面を安定化させる。木々は、我々もひとつのパートである世界自体を強固なものにする。進歩しより良い環境をデザインすること、代替可能なプロセスや物質を使用する製品を生産すること、自然のデザインをバイオ模擬(mimicry)として使用すること、我々が依存する物の考案や製造のための原理として自然のエネルギーや形態を効果的に使用すること、それらのことで我々は発展することが出来る。これは、池田一のFuture Compassに隠されたメッセージである。
池田一からのメッセージ(2)

水不足を含む、水の危機は、生態的に持続可能な未来に向けて奮闘している人たちにとって、ますます深刻な課題になっている。利用可能な水の供給を維持するためには、雨水の貯留、地下水の涵養といった施策が必要である。基本的な水の保護を持続することにおいて絶対必要な役割を果たすのが、木の根っこたちである。

雨水の貯留
地下水の涵養

JG-3
1960年代のアース・アートやランド・アートの始まりや、1950年代の日本でのもの派から、野外展示でのアートの形態は、自然との、実際に地球に密着した交換へと変化し、進展していった。池田一のアーティスト活動は、その全てのステップを更に先へと押し進め、自然の生態系との段階における新しい方向性により近いステップにあると言える。
水で満たされた、巨大な2つの目
ロック・ガーデンのほぼ真ん中に設置された「Future Compass」は、周りのどの植物よりも古くからそこにあった、いわば主のような存在に見える。この重厚な佇まいは、たぶん外観からは見えない「隠された部分」が造り出しているにちがいない。
・カナダのシンボル/メイプルの切り株
池田一の要請に従って、用意された見事なメイプルの切り株二つ。完成作品には、それらが見当たらない。実は、新しい幹づくりの土台になっていて、その上に、日本からの竹や各種の木の枝を集積。多様性の起源は、カナダ、メイプルである。
・洗い出しという方法
製作をリードした東久志がとった方法のひとつに、洗い出しがある。2つの切り株の周りからクレバスにかけて、無造作に10種類もの枝木を配置。その上に、枝が見えなくなるほど、たっぷり土をかける。そして、遺跡を発掘するかのように、刷毛や棒切れで、土中の枝を少しづつ表に暴き出す。この洗い出しによって、土中に深く根をはった、古株の臨場感が醸し出される。
JG-4
ある場所・時での現実の体験に基づいて、プロセスのための必要不可欠なメディア(アーティストと共に)としての自然とインターラクティブである自然特有の対話を展開することで、池田は、究極的には自然がパフォーマンスし、アーティストもまたアートの行為の中にある方法を表現するための言語体系を展開しつつある。
JG-5
水で満たされた二つの巨大な目のような、池田が日本からのアシスタントと共に苦心して造り上げた、台状の切り株。この最初の成長段階は、まさしく自然の劇場にほかならない。これら二つの切り株の、架設、組み立て、構成は人工的であるけれども、まったく自然の場面のように見えるものを再創造している。そしていま、木はその内部を竹で隈なく結束されていて、水のための基地としての役割を果たす。外観は、魅惑的で、豪華である。そして、我々の惑星・地球の多くの地域から由来したもののようだ。その外観から、木々は水にとってのアンカー、停泊地であり、そして水のための導管として作用する、実のところ二酸化炭素を酸素に変える、という中心となる考えが伝わってくる。
左から:
ジョン・グランデ(キュレーター、カナダ)/デニス・オッペンハイム(出品アーティスト、USA)/池田一

JG-6
ロイヤル植物園でのアース・アート展にとって、池田一の水で満たされた木はエコロジカルに持続可能な未来に我々を導くための、仮説のコンパスとして機能するだろう。このコンパスは、望ましい未来への我々の航海のために、斬新な驚くべき方向を我々に提出しているマーカー、サイン、指針である。
W
N
S
E

RETURN