にいがた 水と土の芸術祭2009
WATERPOLIS Niigata Project 2009
水見台団地水抜き通り
2009 7/18〜12/27
「水と土の長い闘い」の歴史をもつ新潟という風土を象徴する、二つの川が立体交差するこの地点を、ひとりひとりが今後の「水と土の物語」の担い手となることを願って、『水見台団地水抜き通り』と命名する。

2つの川が立体交差する地点に、
全長約500メートルの作品を設置
にいがた・水と土の芸術祭2009
WATERPOLIS 水見台団地水抜き通り
池田一


二つの川が、直角に立体交差する。世界の多くの川でアートプロジェクトを展開してきたが、川が立体交差するランドスケープとは初めての遭遇である。この希有な風景にこそ、この土地ならでわの固有の歴史がある。海抜0メートル地帯が多い新潟の、水と土の長い闘いを見て取る象徴的なサイトである。
「どの場所でも、そこにしか出現しない世界性がある」というアーティストとしての直感が、このランドスケープに感応した。
何気ない日常的な田園風景、そこに固有の世界性を覗き見る裂け目を押し広げ、アートという拡大レンズを突っ込む。其処に出現する「人と環境との、ダイナミックな相関関係」を、WATERPOLISと名付けた。水を通じて、人間の居住環境を再構築する、その意味で水性都市と訳してもいい。その水性都市を立体交差点に出現させる、レンズ装置が、アート作品となる。

大通川と矢川の立体交差点、そのポイントに、2基の水見台を設置した。まさに、waterwatchingのためのプラットフォームである。竹山から伐採した竹を組んで造った水見台と、実際の川の流れとの間に、もう一つのレンズを差し込む。「活山水」と命名した、庭的空間である。「水の中の、水。その中の水」といった、風景の中に潜む動態をクローズアップしたものだ。借景は、山に向って流れ、トンネルを抜けて、日本海へと向う川そのものである。枯山水が自分を基点とした静力学的な観相であるのに対して、活山水は人間とランドスケープとの間の、動力学的な行為相といってもいい。実際、水見台に座って、waterwatchingした人は、目前に拡がる水性空間に、自分も入っていきたい誘惑を感じたという。

立体交差点から、下流、すなわち日本海の方に歩を進めると、「水を汲む手」の写真が列をなして、続く。通称「水の手通り」を逆に、日本海を背にして進むと「泥まみれの手」が延々と続く「土の手通り」となる。かって深田で、泥まみれになっての農作業の風景が蘇る。一人の人の中にある「水への想い」と「土への記憶」が、裏表にプリントされているのだ。

二つの川の立体交差から延びる全長約500メートルのWATERPOLISは、親しみを込めて、「水見台団地水抜き通り」と呼ぶことにした。風景の中の構造物を見るというのではなく、そこに出現した新たなランドスケープにひととき居住する。そんな「人と環境」との関係のダイナミズムを、どこに範疇分けしようというのだろうか。最近、私を取り込むカテゴリーは、環境アート、Earth Art、パブリック・アート、ネイチュア・アート、natural architectureなど、さまざま。これらの新しいパースペクティブ捜しはもっと深化すべきだが、私自身はいまパブリック・エコ・アートという言葉が馴染んでいる。

信濃川、阿賀野川という日本を代表する大きな二つの川の河口を持つ新潟市。いまだに市域の4分の1の面積が海抜ゼロメートル地帯という新潟市が日本海側で最初の政令指定都市になるほど大きく発展した背景には、「水」をコントロールし、流されてきた「土」を大地に変え、築き上げてきた先人たちの壮絶な歴史があった。
この「水」と「土」の歴史を踏まえ、新潟市全域で開催された「水と土の芸術祭2009」。
池田一は、もっとも西に位置する西蒲区の、2つの川が立体交差する地点に「WATERPOLIS 水見台団地水抜き通り」という全長約500メートルの作品を設置した。
<水見台団地水抜き通り>を構成する、3つのゾーン
1)
水見台 waterwatching flat
2)
活山水 water-in-water
3)
水/土 交差 crossing water& earth

1 水見台
waterwatching flat
「水見台」は、竹山から切り出した「もうそう竹」と「縄」で造る。
上流側と下流側に造る2つの「水見台」と、その前に川に向って張り出した「活山水」。それに、「水の手・顔」、「土の手・顔」が全長約500メートルにわたって並ぶ「水抜き通り」。これらの構造物は、5ヶ月半という長丁場の野外展示のため、気候の変化、山から吹き下ろす強風など、厳しい自然条件に動じない強度が必要である。鹿児島から、浜松から、横須賀から、強力な助っ人が駆け付つけてくれた。それに、西蒲区役所から専従3名の他、10人の職員が制作を手伝ってくれた。延べ100人程の製作体制があってこそ、2つの川の立体交差点に、長大な広がりをもつ<水見台団地水抜き通り>を出現させることが出来た。製作に関わってくれた全ての人に、感謝を申し上げます。


水見台の前、川との間に、『活山水』と呼ぶ水庭を設置。流れる川を借景とする、日本古来の枯山水とは異なった、生きた自然との対話の空間
2 活山水
water-in-water
立体交差の下流側に造られた<活山水>。方水盤(長方形の箱型の水)の中に、円水盤(円形の水)を配置。円水盤は、市民から寄せられた食器、植木鉢、壷などから成る。
立体交差の上流側にある<活山水>。方水盤の中に配置された、田舟の中にも水が---。かっては腰まで浸かりながら作業した深田であったために使われた田舟である。
提供:佐藤家民俗資料館、他

3 水/土 交差
crossing water & earth
宙に浮かぶ約120枚の写真の、一枚一枚の裏表を、よく見てほしい。
片面は、『水を汲む手』
反対の面は、『泥を掬う手』
一人の人の中にある、「水」と「土」への想いであり、メッセージである
新潟市民の参加による水主撮影を、5/16-17の両日実施
撮影場所:福井集落、佐藤家民俗資料館、サポーターズ会議、みずっちタンク
下流(日本海側)に向って進むと、『水を汲む手』が列をなして並ぶ、「水の手通り」
上流から下流を望むと、水を汲む手が約500メートルにわたって並ぶ『水の手通り』
上流に向って進むと、『泥を掬う手』が延々と続く、「土の手通り」
水と土の闘いのストーリーを明日へと書き伝える水見台団地水抜き通りの住民たちに、<水主さん>と親しく呼び掛けたい。
水まみれの<水主さん>たち
泥まみれの<水主さん>たち
下流から上流に向うと、泥を掬う手が約500メートルにわたって並ぶ『土の手通り』
Special Thanks
山崎巳代治、高橋素晴、児玉龍郎、樺沢耕史、有園広信、斎藤文夫、西蒲区役所、旧庄屋佐藤家、福井自治会、みずっちたんく、高橋モーターズ
写真:児玉龍郎

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